心臓を鷲掴みにされるような緊張感、先が読めない展開への知的興奮、そして人間の心の闇を覗き込むような心理的な恐怖。スリラーと一言で言っても、その魅力は多岐にわたります。
今回は、Netflixが誇る膨大なドラマライブラリの中から、様々なスリルの形を極めたNetflixオリジナルスリラードラマおすすめ10選を紹介します。
一度観始めたら、リモコンを置くタイミングを見失うこと必至。あなたの日常を忘れさせる、最高に刺激的な物語の世界へご案内します。
Netflixオリジナルスリラードラマ10本を厳選!
マインドハンター
1970年代後半、FBIに連続殺人という概念すらなかった時代。
二人のFBI捜査官ホールデン・フォードとビル・テンチは、服役中のシリアルキラーたちと面会し、その心理を分析することで、新たな犯罪科学プロファイリングを確立しようと奮闘する。
- 1970年代という時代の空気を、ディテール豊かに再現した、タイムカプセルのような没入感。
- 犯罪プロファイリング黎明期の手探りの捜査を、アナログな質感でリアルに描く。
- デヴィッド・フィンチャーの完璧主義が光る、歴史的ドキュメントとしての価値も高い作品。
ジャンル | クライム スリラー |
原案 | ジョー・ペンホール |
出演 | ジョナサン・グロフ ホルト・マッキャラニー アナ・トーヴ ハナー・グロス コッター・スミス |
配信 | 2017年~2019年 |
シーズン | 2 |
各話の長さ | 34~73分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、単なる犯罪ドラマではなく、1970年代という特定の時代を切り取った、極めて精緻なタイムカプセルのような作品です。
物語の魅力は、シリアルキラーとの対話だけに留まりません。デヴィッド・フィンチャー監督は、当時のオフィス文化、ファッション、車、そして社会に根強く残る制度的な性差別といった、時代の空気をディテール豊かに再現します。
自動化されていない資料整理、タバコの煙が充満するオフィス、出張先の安モーテル。これらの描写が、まだ犯罪プロファイリングという学問が黎明期にあった頃の、手探りの捜査の質感をリアルに伝えています。
私たちは、現代の洗練された犯罪捜査ドラマを見慣れた目から、この不便でアナログな時代を追体験させられます。そのことが、主人公たちが前例のない領域へと踏み込んでいくことの困難さと、彼らの仕事の画期性を、より一層際立たせるのです。
これは、犯罪史の転換点を描くと同時に、過ぎ去った時代の空気そのものをパッケージングした、貴重な歴史的ドキュメントでもあります。

オザークへようこそ
優秀なファイナンシャルプランナーのマーティ・バードは、麻薬カルテルの資金洗浄に関わっていたことがバレて、命の危機に瀕する。
家族を救うため、彼はミズーリ州のオザーク高原に移住し、夏の間だけで5億ドルを洗浄するという無謀な計画に挑む。
- 一つの妥協が次なる妥協を呼び、徐々に魂が蝕まれていく様を描く、底なし沼のような恐怖。
- 派手なアクションではなく、登場人物たちが直面する倫理的な選択の連続がもたらす、持続的な緊張感。
- 平凡な家族が怪物へと変貌していく過程を、冷徹な視点で描き切った、重厚なクライムサガ。
ジャンル | クライム スリラー |
原案 | ビル・ドゥビューク マーク・ウィリアムズ |
出演 | ジェイソン・ベイトマン ローラ・リニー ソフィア・フブリッツ スカイラー・ゲルトナー ジュリア・ガーナー |
配信 | 2017年~2022年 |
シーズン | 4 |
各話の長さ | 52~80分 |
日本語吹き替え | あり |
本作が描くのは、一つの嘘が次の嘘を呼び、一つの妥協が次なる妥協を強いる、底なし沼のような物語です。
主人公マーティ・バードは、当初家族を守るためという大義名分のもと、一度きりの不正に手を染めます。しかし、その最初の妥協が、彼らを麻薬カルテルや地元の犯罪組織との、決して抜け出すことのできない関係へと引きずり込んでいくのです。
このドラマのスリルは、派手な銃撃戦よりも、バード一家が直面する倫理的な選択の連続にあります。小さな不正を許容し、脅迫に屈し、ついには殺人にさえも加担していく。その一つ一つの選択は、生き残るための仕方ない妥協に見えますが、積み重なることで、彼らの魂を確実に蝕んでいきます。
これは、人間がいかにして道徳的な一線を越え、怪物へと変貌していくかを、千の小さな切り傷のように、じわじわと、しかし克明に描き出す物語です。その過程は、恐ろしくも目が離せない、極上のスリラー体験を提供します。

イカゲーム
多額の借金を抱え、人生の崖っぷちに立たされた人々が、謎の組織から高額の賞金を懸けたサバイバルゲームへの招待を受ける。
参加者たちは、幼い頃に遊んだ懐かしいゲームに挑むが、敗者には死が待ち受けていた。
- 世界中の誰もが知る子供の遊びを、最も残酷なデスゲームへと変貌させる、独創的なアイデア。
- 共有されたノスタルジーを逆手に取り、視聴者の心理に直接訴えかける、巧みな恐怖演出。
- ポップなビジュアルと、暴力的な内容のギャップが生み出す、忘れがたい悪夢のような視聴体験。
ジャンル | ホラー サスペンス デスゲーム サバイバル アクション |
監督 | ファン・ドンヒョク |
脚本 | ファン・ドンヒョク |
原作 | ファン・ドンヒョク |
出演 | イ・ジョンジェ パク・ヘス ウィ・ハジュン チョン・ホヨン オ・ヨンス |
配信 | 2021年~ |
シーズン | 2 |
各話の長さ | 33~76分 |
日本語吹き替え | あり |
本作の恐怖の源泉は、私たちの子供時代のノスタルジーそのものを、最も残酷な形で武器化している点にあります。だるまさんがころんだや綱引き、ビー玉遊び。これらのゲームは、国や文化を超えて多くの人々が共有する、無垢で幸福な記憶の象徴です。
しかし、監督のファン・ドンヒョクは、その普遍的なノスタルジーを逆手に取り、最も純粋な思い出を、最も残酷な殺戮の場へと反転させます。このギャップこそが、本作のえもいわれぬ恐怖を生み出しています。
私たちは、ゲームのルールを直感的に理解できるからこそ、参加者たちの絶望と恐怖を、より一層生々しく感じてしまうのです。ポップでカラフルなセットの中で、かつて友達と笑いながら遊んだ記憶が、血と暴力の記憶へと上書きされていく。
この悪夢のような体験は、単なるデスゲームのスリルを超えて、私たちの純粋だった過去さえも人質に取るような、巧みで悪質な心理的トラップと言えるでしょう。

ダーク
ドイツの小さな町ヴィンデンで、一人の少年の失踪事件をきっかけに、4つの家族の隠された過去と秘密が暴かれていく。
事件は、33年周期で町に起こる不可解な出来事と繋がり、やがて時空を超えた壮大な物語へと発展する。
- 全てが決定されているという運命の恐怖を描く、決定論的な世界観がもたらす、ユニークなスリル。
- ヴィンデンの町全体が、登場人物たちを閉じ込める、一つの巨大な牢獄として機能する物語構造。
- 知的なSFパズルと、ギリシャ悲劇のような壮大な運命の物語が融合した、他に類を見ない傑作。
ジャンル | SF スリラー 歴史 |
原案 | バラン・ボー・オダー ジャンテエ・フリース |
出演 | ルイス・ホフマン セバスティアン・ルドルフ エラ・リー マヤ・ショーネ レナ・ウルゼンドフスキー |
配信 | 2017年~2020年 |
シーズン | 3 |
各話の長さ | 45~73分 |
日本語吹き替え | なし |
このドラマのスリルは、未来や過去がどうなるかという予測のスリルではなく、全てがすでに決定されているという運命の恐怖にあります。
物語の中心地であるヴィンデンの町は、まるで一つの呪われた生命体のようで、4つの主要な家族は、世代を超えて互いに愛し、憎み、裏切り合い、その複雑な人間関係が、抜け出すことのできない時間のループそのものを形成しています。
登場人物たちは、未来を知り、過去を変えようと必死にもがきますが、その行動こそが、彼らが知る未来を確定させるための、運命の歯車の一部となってしまいます。この抗いがたい決定論的な世界観は、観る者に息が詰まるような閉塞感と、知的でありながらも恐ろしいスリルを与えます。
森、洞窟、そして不気味にそびえ立つ原子力発電所。ヴィンデンの町の全てが、この悲劇的な円環構造の一部として機能しており、町そのものが、この物語の真の主人公であり、同時に牢獄でもあるのです。

ペーパー・ハウス
教授と名乗る謎の男に集められた、8人の犯罪のプロフェッショナルたち。彼らはそれぞれ都市の名前をコードネームとし、スペインの造幣局に立てこもり、史上最大の強盗計画を実行に移す。
しかし、完璧だったはずの計画は、予期せぬ事態の連続で、二転三転していく。
- 二転三転する予測不能な展開と、息もつかせぬ緊張感が持続する、ノンストップ・アクションスリラー。
- 視聴者が犯罪者である彼らを応援したくなるほど、人間的で魅力にあふれたキャラクター造形。
- 完璧な頭脳戦と、エモーショナルな人間ドラマが、見事なバランスで融合した脚本。
ジャンル | クライム スリラー |
原案 | アレックス・ピナ |
出演 | ウルスラ・コルベロ アルバロ・モルテ イツィアル・イトゥーニョ ペドロ・アロンソ パコ・トウス |
配信 | 2019年~2022年 |
シーズン | 5 |
各話の長さ | 42~76分 |
日本語吹き替え | なし |
本作を世界的な大ヒットに導いたのは、その息つく暇もないスリリングな展開と、何よりも視聴者が感情移入せずにはいられない、魅力的なキャラクターたちです。
この強盗団は、単なる犯罪者の集まりではありません。教授の掲げる体制への抵抗という理念に共感し、それぞれが社会から疎外された過去を持つ、不器用な人間たちの集まりなのです。計画の緊張感あふれる進行と並行して、人質や警察との間に生まれる予期せぬ人間関係や、強盗団内部での恋愛、裏切り、そして仲間割れが、濃密な人間ドラマとして描かれます。
特に、衝動的で情熱的なトーキョー、冷静沈着なリーダーのベルリンなど、一度見たら忘れられないキャラクターたちの魅力は絶大です。私たちは、彼らが犯罪者であることを忘れ、その計画の成功と、彼らの生存を、固唾をのんで応援してしまいます。
ハイレベルな頭脳戦と、エモーショナルな人間ドラマが完璧に融合した、ノンストップ・エンターテイメントの傑作です。

YOU ー君がすべてー
ニューヨークの書店で働く、知的で魅力的な青年ジョー・ゴールドバーグ。彼は、店にやってきた作家志望の女性ベックに一目惚れする。
しかし、彼の愛は次第に危険な執着へと変わり、彼女のSNSを監視し、彼女の人生に巧みに介入し、邪魔者を排除していく。
- ストーカーであり殺人鬼である主人公の一人称で物語が進行する、斬新で没入感の高い構成。
- 主人公の歪んだ論理に、思わず共感や同情をしてしまう、道徳的な居心地の悪さがもたらすスリル。
- SNS時代の恐怖と、ロマンティック・コメディの定型を批評的に利用した、現代的な脚本。
ジャンル | 心理スリラー |
原作 | キャロライン・ケプネス 「You」 |
出演 | ペン・バッジリー エリザベス・レイル ルカ・パドヴァン ザック・チェリー シェイ・ミッチェル |
配信 | 2019年~2025年 |
シーズン | 5 |
各話の長さ | 41~60分 |
日本語吹き替え | あり |
本作の革新性と恐ろしさは、物語の全てが、ストーカーであり殺人鬼である主人公ジョー・ゴールドバーグの一人称で語られる点にあります。私たちは、彼の内なる声(ナレーション)を通して、世界を認識させられます。
そこでは、彼のストーキングは純粋な愛のためのリサーチであり、殺人は愛する人を守るための、やむを得ない障害物除去として正当化されます。この歪んだ視点に強制的に付き合わされることで、視聴者は奇妙な共犯関係へと引きずり込まれます。
ジョーの行動が恐ろしいとわかっているのに、時に彼のウィットに富んだ独白に笑ってしまったり、彼の計画が成功するようにハラハラしてしまったりする。この道徳的な居心地の悪さこそが、本作が提供するユニークなスリルです。
SNS時代におけるプライバシーの脆さや、ロマンティック・コメディの定型をパロディ化しながら、人間の愛と執着の危険な境界線を探求する、極めて現代的な心理スリラーです。

ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス
かつてヒルハウスと呼ばれる幽霊屋敷で、ひと夏の恐ろしい体験をしたクレイン家の5人兄妹。
大人になった彼らは、末の妹の悲劇をきっかけに、再び屋敷の呪いと、自らの心の傷に向き合うことを余儀なくされる
- 画面の隅々に隠された無数の幽霊たち。物語を追いながら幽霊探しをしてしまう、ユニークな恐怖演出。
- 恐怖は常に見えない場所に潜んでいるという、持続的な緊張感とパラノイアを生み出す巧みな手法。
- ホラー演出と、キャラクターが抱える心理的なトラウマが見事にリンクした、深みのある物語。
ジャンル | ホラー スリラー スーパーナチュラル |
原作 | シャーリイ・ジャクスン 「丘の屋敷」 |
出演 | ミキール・ハースマン パクストン・シングルトン オリビア・クレイン カーラ・グギノ ティモシー・ハットン |
配信 | 2018年 |
話数 | 10話 |
各話の長さ | 42~71分 |
日本語吹き替え | あり |
本作を観る上で、ぜひ注目してほしいのが、画面の隅々に巧みに隠された幽霊たちの存在です。監督のマイク・フラナガンは、物語の本筋とは関係のない背景に、無数の幽霊の姿をカメオ出演させています。
主要キャラクターが会話している後ろの暗闇、ドアの隙間、像の隣。一度その存在に気づいてしまうと、私たちは物語を追いながらも、常に画面の隅々をスキャンし、隠れた幽霊を探さずにはいられなくなります。
この演出は、単なる遊び心やイースターエッグではありません。それは、恐怖は、あなたが気づかない時でも、すぐそばに存在しているという、本作のテーマそのものを視覚化したものです。
そして、クレイン家の子供たちが、大人になってもなお、過去のトラウマという見えない幽霊に常に見つめられ、人生を蝕まれていることを象徴しています。この手法により、本作は直接的な恐怖シーンだけでなく、何気ない会話シーンでさえも、不穏な緊張感に満ちたものとなり、他に類を見ない持続的なスリルを生み出すことに成功しています。

ブラック・ミラー
もしもテクノロジーが、今よりもほんの少しだけ進歩したら?
SNSの評価が人の社会的地位を決める世界、死んだ恋人をAIで再現するサービス、視聴者が物語の展開を選べるインタラクティブな映画…。
テクノロジーがもたらす、人間の心の光と闇を描く、一話完結のSFアンソロジー。
- 現代社会と地続きにある、テクノロジーへの不安や倫理的な問題を鋭く描く、一話完結の物語。
- SF的な設定の中に、愛や嫉妬といった、普遍的で人間的な感情のドラマを描く、巧みな脚本。
- 観る者の価値観を揺さぶり、現代社会と自分自身の関係を問い直させる、知的で刺激的なテーマ性。
ジャンル | SF スリラー アンソロジー |
原案 | チャーリー・ブルッカー |
出演 | ロリー・キニア アンナ・ウィルソン・ジョーンズ ドナルド・サムター リンジー・ダンカン チェトナ・パンディア |
配信 | 2016年~ |
シーズン | 7 |
各話の長さ | 44~89分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、現代版「トワイライト・ゾーン」と評され、私たちの日常と地続きにあるテクノロジーへの不安を、鋭い切れ味で描き出すSFスリラーの傑作です。
各エピソードが独立した物語であるため、どこから観ても楽しめますが、その全てに共通しているのは、便利なはずのテクノロジーが、いかに私たちの人間関係を歪め、倫理観を麻痺させ、そして新たな形の孤独を生み出すかという、痛烈な問いかけです。
本作が単なる技術批判に終わらないのは、その中心に常に、愛、嫉妬、虚栄心、後悔といった、極めて人間的な感情のドラマを置いているからです。例えば、シーズン3の「サン・ジュニペロ」は、仮想現実を舞台にした美しいラブストーリーとして多くの賞賛を受けましたが、それもまた、死や老いという人間の根源的な恐怖と向き合う物語です。
本作は、私たちが毎日手にしているスマートフォンの黒い鏡の向こう側に広がる、ありえたかもしれない未来を映し出し、私たち自身の生き方を問い直す、知的で刺激的な視聴体験を提供します。

ボディガード -守るべきもの-
アフガニスタンからの帰還兵で、PTSDに苦しむロンドン警視庁のデビッド・バッド巡査部長。
彼は、自身の信条とは正反対の、好戦的な内務大臣ジュリア・モンタギューの警護を担当することになる。政治的な陰謀とテロの脅威が渦巻く中、二人の間には複雑な関係が芽生えていく。
- 冒頭20分間の列車シーンに代表される、近年稀に見る、息詰まるような緊張感とサスペンス演出。
- 政治的な陰謀、テロの脅威、そして主人公の内面的なトラウマが絡み合う、重層的なプロット。
- 誰が敵で誰が味方か分からない、疑心暗鬼に満ちたノンストップ・ポリティカルスリラー。
ジャンル | 政治 スリラー |
原案 | ジェド・マーキュリオ |
出演 | リチャード・マッデン キーリー・ホーズ ジーナ・マッキー ソフィー・ランドル ポール・レディ |
配信 | 2018年 |
話数 | 6話 |
各話の長さ | 56~75分 |
日本語吹き替え | あり |
本作の真骨頂は、冒頭20分間にあります。主人公デビッドが、子供たちと乗った列車内で、自爆テロを企てる女性に遭遇する。このオープニングシークエンスは、近年稀に見る、息詰まるような緊張感に満ちています。
狭い列車内という閉鎖空間、爆弾の存在、そして犯人の動揺。派手なアクションではなく、デビッドの冷静な対話と心理的な駆け引きだけで、観る者の心拍数を極限まで高めていきます。この強烈なオープニングが、本作全体のトーンを決定づけています。
クリエイターのジェド・マーキュリオは、政治的な陰謀劇と、主人公が抱えるPTSDという内面的なドラマを、常に高い緊張感を保ったまま、巧みに織り交ぜていきます。誰が敵で誰が味方なのか、何が真実で何が嘘なのか。
情報が錯綜し、誰も信用できない状況の中で、私たちは主人公デビッドと共に、深い疑心暗鬼の渦へと引きずり込まれます。1秒たりとも目が離せないとは、まさにこのドラマのためにある言葉でしょう。

リプリー
1960年代のニューヨーク。しがない詐欺師のトム・リプリーは、富豪から、イタリアで放蕩生活を送る息子のディッキーを連れ戻してほしいと依頼される。
イタリアに渡ったリプリーは、ディッキーの優雅な生活に魅了され、次第に彼への異常な執着を募らせていく。
- イタリアの風景を芸術的に切り取った、息をのむほど美しいモノクロームの映像美。
- アンドリュー・スコットによる、空虚で、不気味で、どこか滑稽な、全く新しいトム・リプリー像。
- 犯罪のプロセスを執拗なまでに丹念に描く、文学的でアート性の高いスリラー。
ジャンル | ネオノワール サイコスリラー |
原作 | パトリシア・ハイスミス 「太陽がいっぱい」 |
出演 | アンドリュー・スコット ダコタ・ファニング ジョニー・フリン エリオット・サムナー マルゲリータ・バイ |
配信 | 2024年 |
話数 | 8話 |
各話の長さ | 44~76分 |
日本語吹き替え | あり |
「シンドラーのリスト」の脚本家スティーヴン・ザイリアンが、パトリシア・ハイスミスの名作小説を、まるでイタリア・ネオレアリズモ映画のような、重厚なアート作品として再生させました。
全編を貫く、息をのむほど美しいモノクロームの映像に目を奪われます。それは、主人公トム・リプリーの、色彩を感じさせない空虚な内面と、彼の犯罪が持つ道徳的な曖昧さを象徴しています。
アンドリュー・スコット演じるリプリーは、過去の映画化作品で見られたような、魅力的で社交的な詐欺師ではありません。彼は、不器用で、常に周囲を観察し、他人のアイデンティティを模倣しようとする、不気味なほどの空っぽな存在です。
物語は、彼の犯罪のプロセスを、まるで職人の仕事を見せるかのように、執拗なまでに丹念に、そして客観的に描き出します。その結果、私たちはスリルよりも、彼の行動の非効率さや、そこから生まれるブラックなユーモア、そして彼の底知れぬ孤独を感じることになります。
観る者の美的感覚と知性を刺激する、極めて文学的なスリラーです。

まとめ
スリラーというジャンルの懐の深さを感じさせる、Netflixオリジナルスリラードラマおすすめ10選を紹介しました。
これらのドラマは、ただあなたを怖がらせるだけではありません。人間の心理の深淵を覗かせ、社会の歪みを映し出し、そして何よりも、物語の力がいかに私たちの心を掴んで離さないかを証明してくれます。
今夜はどの扉を開けて、眠れぬ夜を過ごしますか?最高の緊張感が、あなたを待っています。
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