Netflixは、今やアカデミー賞の常連となるほど、質の高いオリジナル映画を世に送り出し続けています。
巨匠の野心作から、世界に衝撃を与えたインディペンデント作品、そして家族で楽しめるアニメーションまで、その多様性は尽きることがありません。
今回は、その膨大なライブラリの中から、批評家からの評価、受賞歴、そして文化的影響力を総合的に判断し、これさえ観ておけば間違いないと断言できる珠玉のNetflixオリジナル映画10本を独自のレビューでお届けします。
Netflix映画の奥深い世界を是非ご堪能ください。
Netflixオリジナル映画10本を厳選!
ROMA/ローマ
1970年代のメキシコシティ、ローマ地区。
中産階級の家庭に仕える若い家政婦クレオの視点を通して、一家の日常と崩壊、そして彼女自身の人生に訪れる愛と裏切り、悲劇と再生が、激動の社会情勢を背景に描かれる。
- Dolby Atmosを駆使した革新的な音響設計。ヘッドホンでの視聴で真価を発揮する没入感。
- 人生の営みを静かに見つめる、ゆったりとしたカメラワークがもたらす独特の時間の流れと映像詩。
- アカデミー賞3部門受賞。映画の芸術的可能性をスクリーン(とリビングルーム)に示した歴史的傑作。
監督 | アルフォンソ・キュアロン |
脚本 | アルフォンソ・キュアロン |
出演 | ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ、マルコ・グラフ |
配信 | 2018年 |
上映時間 | 135分 |
日本語吹き替え | あり |
本作を傑作たらしめているのは、息をのむほど美しいモノクロ映像だけではありません。
その真価は、観る者の聴覚に直接訴えかける、緻密に設計された「音響」にあります。監督のアルフォンソ・キュアロンは、Dolby Atmosを駆使し、画面の奥や外から聞こえてくる環境音――犬の鳴き声、遠くの物売りの声、街の喧騒、そして空を横切る飛行機の音――で、360度の音響空間を構築しました。これにより、私たちはセリフや音楽に導かれるのではなく、まるで1970年代のメキシコシティの空気を実際に吸い込んでいるかのような、圧倒的な没入感を体験します。
また、本作のカメラは、多くの場合ゆっくりとパンニング(水平に動く)し、登場人物たちの人生の断片を、まるで川の流れを眺めるかのように静かに見つめます。この独特の時間の流れは、個人の喜びや悲劇が、より大きな世界の営みの中に存在しているという、本作の持つ壮大で客観的な視点を象徴しています。
これは、目で観るだけでなく、耳で聴き、肌で感じる、まさに体験する映画なのです。

アイリッシュマン
トラック運転手から裏社会の伝説的ヒットマンへと成り上がったフランク・シーランこと通称アイリッシュマン。
彼の回想を通して、全米トラック運転手組合のリーダー、ジミー・ホッファの失踪事件の真相など、第二次世界大戦後のアメリカ裏社会の壮大な歴史が描かれる。
- 信頼できない語り手を通して、歴史と個人の記憶の曖昧な関係性を探求する知的な物語構造。
- 壮大なギャング叙事詩と、一人の老人の孤独な自己正当化の物語という二重構造。
- 巨匠スコセッシが到達した、アクションよりも内省、神話化よりもその解体を試みる円熟の境地。
監督 | マーティン・スコセッシ |
脚本 | スティーヴン・ザイリアン |
出演 | ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、レイ・ロマーノ、ボビー・カナヴェイル、アンナ・パキン、スティーヴン・グレアム、ハーヴェイ・カイテル |
配信 | 2019年 |
上映時間 | 210分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、単なるギャング映画ではなく、信頼できない語り手を通して歴史と記憶の曖昧さを描いた、極めて知的な作品です。
物語の全ては、老人ホームで過去を語るフランク・シーランの視点から紡がれます。そのため、私たちは彼が語る出来事がどこまで客観的な事実で、どこからが彼の自己正当化や記憶違い、あるいは虚飾なのかを判断する術を持ちません。
スコセッシ監督は、アメリカ現代史最大の謎の一つであるジミー・ホッファ失踪事件を、あえてこの曖昧な個人の「告白」として再構築することで、観る者に歴史の真実とは何かを問いかけます。
フランクの娘ペギーが彼に向ける、無言だが雄弁な軽蔑の眼差しは、彼が語る忠誠や仕事の物語がいかに空虚であるかを突きつけてきます。私たちは、壮大な裏社会の年代記を目撃すると同時に、一人の男が自らの人生を意味づけようと必死に紡ぐ、孤独で悲しい物語の聞き手にもなるのです。
これは「歴史の真実」ではなく、「ある男が見た(あるいは見せたかった)歴史」を描いた、深遠なる一作です。

マリッジ・ストーリー
ニューヨークの舞台監督チャーリーと、ロサンゼルス出身の女優ニコール。
互いに愛し合っていたはずの二人が、離婚というプロセスを通して、それぞれの主張をぶつけ合い、傷つけ合い、そして家族の新たな形を模索していく様を描く。
- 登場人物の心理的な距離を、カメラの配置や構図、ロケーションで巧みに表現する映画的演出。
- ニューヨークとロサンゼルスという二つの都市を、価値観の対立のメタファーとして機能させる脚本。
- 空間が感情を増幅させる効果を最大限に利用した、息詰まるようなクライマックスの口論シーン。
監督 | ノア・バームバック |
脚本 | ノア・バームバック |
出演 | スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、アラン・アルダ、ローラ・ダーン、レイ・リオッタ |
配信 | 2019年 |
上映時間 | 136分 |
日本語吹き替え | あり |
本作の演出は、空間と距離を巧みに操ることで、登場人物たちの心理状態を見事に視覚化しています。物語の序盤、同じアパートに暮らしていても、チャーリーとニコールの間には見えない壁が存在し、フレームの中で二人はしばしば別々の空間に配置されます。
やがてニコールが息子を連れてロサンゼルスへ移ることで、ニューヨークとロサンゼルスという二つの都市が、彼らの価値観の対立、そして修復困難な物理的・心理的な距離のメタファーとして機能し始めます。
この演出の白眉は、チャーリーがLAのニコールのアパートを訪れるシーンです。最初はよそよそしい距離感を保っていた二人が、口論がエスカレートするにつれて互いのパーソナルスペースを侵犯し、狭い空間で感情を爆発させます。
この閉鎖空間での衝突は、彼らの行き場のない怒りと悲しみをより濃密なものにしています。本作は、俳優の演技だけでなく、こうした空間演出によってキャラクターの心の距離感を観客に体感させる、極めて映画的な作品なのです。

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
ファシズムが台頭する戦時下のイタリア。
最愛の息子カルロを亡くした木工職人のゼペットは、悲しみのあまり、息子に似せた操り人形を作り出す。その人形に命が宿り、ピノッキオと名付けられるが、彼は純粋で奔放なあまり、様々な騒動を巻き起こしていく。
- 不完全さを人間性の証として祝福し、ファシズムという画一的な思想に対置させるテーマ性。
- 死と再生を繰り返すことで命の尊さを学ぶ、本作独自のユニークで深遠な死生観。
- 親と子が互いに影響を与え合い、共に成長していくという、双方向の愛を描いた感動的な物語。
監督 | ギレルモ・デル・トロ マーク・グスタフソン |
脚本 | ギレルモ・デル・トロ パトリック・マクヘイル |
声の出演 | ユアン・マクレガー、デヴィッド・ブラッドリー、グレゴリー・マン、バーン・ゴーマン、ジョン・タトゥーロ |
配信 | 2022年 |
上映時間 | 117分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、広く知られるディズニー版へのアンチテーゼとして、不完全さと死を人間性の根源として祝福する、深遠な物語です。
ディズニー版のピノッキオが良い子になることで人間になることを目指すのに対し、デル・トロ版のピノッキオは、その奔放で、時に反抗的な不完全さこそが、個人を抑圧し画一化しようとするファシズムへの最も力強い抵抗となり得ると描いています。
さらに本作は、ピノッキオが何度も死と再生を繰り返すという大胆な設定を用いています。彼は死後の世界で命は一度きりだからこそ尊いという真理を学び、父ゼペットもまた、完璧な息子の代用品を求める過ちから、不完全なピノッキオをありのままに愛することを学びます。
これは、子供が一方的に成長する物語ではなく、親もまた子供によって成長させられるという、双方向の愛と学びの物語なのです。
限りある命の尊さと、失われたものへの愛を、ダークで美しい映像の中に描き切った、まさに大人のための魂の寓話です。

パワー・オブ・ザ・ドッグ
1925年のモンタナ。威圧的でカリスマ的な牧場主フィルは、弟が結婚して連れてきた気弱な妻ローズとその息子ピーターを、執拗にいびり始める。
しかし、その冷酷な振る舞いの裏には、フィル自身が抱える深い孤独と抑圧された秘密が隠されていた。
- 言葉以上に物語るオブジェクト(物)と、観る者の五感に訴える触覚的な映像表現。
- 登場人物たちの抑圧された感情や欲望を象徴する、数々のメタファーに満ちた小道具。
- 全てのディテールに意味が込められた、緻密で計算高い脚本とサスペンスフルな演出。
監督 | ジェーン・カンピオン |
脚本 | ジェーン・カンピオン |
出演 | ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー、トーマシン・マッケンジー |
配信 | 2021年 |
上映時間 | 128分 |
日本語吹き替え | あり |
ジェーン・カンピオン監督は、本作で言葉以上に物と触覚に物語を語らせています。
フィルが亡き師ブロンコ・ヘンリーを偲びながら編み上げるロープ、神聖なまでに手入れする鞍、ピーターが繊細な手つきで作り出す紙の花。これらのオブジェクトは、登場人物たちが言葉にできない抑圧された感情や欲望、そして秘めた殺意の象徴として、執拗にスクリーンに映し出されます。
カメラは、ザラついたロープの感触、馬の汗で濡れた鞍の革、泥にまみれたフィルの手、ピーターが撫でるウサギの柔らかな毛並みといったディテールを執拗に捉え、観る者にまるでその場にいるかのような触覚的な感覚を呼び起こします。
この触覚的な演出が、登場人物たちの間の目に見えない心理的な緊張感を増幅させているのです。
物語の恐ろしい結末の鍵となるオブジェクトが、いかに周到に物語全体に配置されていたかに気づいた時、観客は改めてこの映画の緻密さと恐ろしさに戦慄することになるでしょう。

西部戦線異状なし
第一次世界大戦末期。
愛国心に駆られてドイツ軍に志願した17歳のパウルは、仲間たちと共に西部戦線へと送られる。
しかし、彼を待ち受けていたのは、英雄的な活躍とは無縁の、泥と死にまみれた塹壕での過酷で無意味な日常だった。
- 観客の五感に直接訴えかけ、戦場の過酷さを体感させる、圧倒的な没入感とリアリズム。
- 英雄もカタルシスも不在。ただ消耗していくだけの戦争の現実を、ドイツの視点から描いた意義。
- アカデミー賞4部門受賞。戦争の非人間性を、一切の感傷を排して描き切った映像体験。
監督 | エドワード・ベルガー |
原作 | エーリヒ・マリア・レマルク「西部戦線異状なし」 |
脚本 | イアン・ストーケル、レスリー・パターソン、エドワード・ベルガー |
出演 | フェリックス・カマラー、アルブレヒト・シュッフ、ダニエル・ブリュール、アーロン・ヒルマー、エディン・ハサノヴィッチ |
配信 | 2022年 |
上映時間 | 147分 |
日本語吹き替え | あり |
多くの戦争映画が戦闘のスペクタクルや英雄的な行為を描くのに対し、本作は戦争の体感そのものに焦点を当てています。
観客は、主人公パウルの視点を通して、鳴り響く砲撃音、降り注ぐ土砂、そして身を切るような寒さといった戦場の環境を、五感で追体験させられます。特に、泥と水にまみれた塹壕での絶望的な攻防は、戦争が個人の尊厳や人間性をいかに無慈悲に踏み躙るかを、一切の感傷を排して描き出します。
本作が画期的なのは、有名な反戦小説を初めてドイツの視点から映画化した点です。これにより、物語は敵国を打倒するカタルシスとは無縁の、ただただ自国の若者たちが無意味に消耗していく様を内側から見つめる、痛切な自己批判の様相を呈します。
英雄も悪役も存在せず、ただ命令に従い、生き延びようとする兵士たちの姿があるだけ。戦争の非人間性を、これほどまでに圧倒的な映像と音響で観る者の身体に刻みつける作品は稀有でしょう。

Okja/オクジャ
韓国の山奥で、心優しい少女ミジャと巨大な遺伝子組み換え生物オクジャは、家族のように暮らしていた。
しかしある日、オクジャは多国籍企業ミランド社によってニューヨークへ連れ去られてしまう。ミジャはオクジャを救うため、壮大な冒険の旅に出る。
- 心温まる交流、アクションコメディ、社会派ドラマが渾然一体となった、ポン・ジュノ監督ならではのジャンル越境の妙。
- 観る者の感情を激しく揺さぶる、予測不能なストーリー展開とトーンの変化。
- 可愛らしいキャラクターとグロテスクな現実の対比で、食肉産業や資本主義の矛盾を鋭く問う物語。
監督 | ポン・ジュノ |
脚本 | ポン・ジュノ、ジョン・ロンソン |
出演 | ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョン、ピョン・ヒボン、スティーヴン・ユァン、リリー・コリンズ |
配信 | 2017年 |
上映時間 | 120分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、ポン・ジュノ監督の真骨頂であるジャンルの越境が最も鮮やかに発揮された一作です。
物語は、少女と不思議な生き物の心温まる交流を描く、まるでスタジオジブリ作品のような牧歌的な雰囲気で幕を開けます。
しかし、ミジャがソウルへ向かうと、物語は突如としてドタバタのアクションコメディへと変貌。さらにニューヨークへと舞台を移すと、食肉産業や資本主義の闇を痛烈に告発する社会派ドラマへとその顔を変えます。
これらの全く異なるジャンルが、一つの作品の中で違和感なく、むしろ互いの効果を高め合うようにシームレスに繋がっているのが、ポン・ジュノ監督の天才的なバランス感覚です。私たちは、ミジャの純粋な冒険に心を躍らせ、ティルダ・スウィントンやジェイク・ギレンホールが演じる奇妙なキャラクターたちに笑い、そして食肉工場の恐ろしい現実に言葉を失う。
この感情のジェットコースターこそが、「Okja/オクジャ」の最大の魅力であり、観る者に強烈な印象と根源的な問いを残すのです。

ドント・ルック・アップ
地球に衝突する巨大彗星を発見した落ちこぼれの天文学者コンビ。
人類滅亡の危機を世界に訴えようとするが、メディアも政府も、そして大衆も、誰も真剣に取り合おうとしない。果たして二人は世界を救えるのか。
- 現代社会の情報の洪水と注意散漫さを体現する、アダム・マッケイ監督の独特な編集スタイル。
- コメディとして笑わせながらも、観る者を居心地悪くさせる、現代社会の病理を突いた巧みな風刺。
- レオナルド・ディカプリオを筆頭とする超豪華キャストが、現代の愚かな人々を本気で演じるアンサンブルの妙。
監督 | アダム・マッケイ |
脚本 | アダム・マッケイ |
出演 | レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、ケイト・ブランシェット、ロブ・モーガン、メリル・ストリープ |
配信 | 2021年 |
上映時間 | 133分 |
日本語吹き替え | あり |
この映画の真の面白さは、その物語だけでなく、アダム・マッケイ監督の独特な編集スタイルにあります。彼は、高速なカット割り、突然挿入されるストック映像のモンタージュ、登場人物が第四の壁を破るかのような視線といった手法を多用します。
これらのテクニックは、単なる奇をてらった演出ではありません。SNSのタイムラインのように断片的な情報が絶えず流れ、人々が真実よりも刹那的なエンタメを求める現代社会の注意散漫さと情報の洪水そのものを、映画の形式で体現しているのです。
科学者たちの必死の訴えが、ワイドショーのゴシップや政治家のスキャンダル、ネットのミームといったノイズにかき消されていく様は、まさに私たちの日常そのもの。
この編集スタイルによって、私たちはコメディとして笑いながらも、同時に現代社会の病理に巻き込まれているかのような、落ち着かない居心地の悪さを感じさせられます。
これは、気候変動やパンデミックといった現実の危機に対する社会の反応を、映画の文法そのもので批評した、極めて現代的な風刺映画です。

シカゴ7裁判
1968年、ベトナム戦争反対を掲げたデモが、シカゴでの民主党全国大会で警察と衝突。
デモの首謀者として、活動家アビー・ホフマンやトム・ヘイデンら7人が起訴される。思想も戦術も異なる彼らは、理不尽な裁判に立ち向かう。
- 脚本家アーロン・ソーキンの真骨頂。言葉の応酬だけで観る者を魅了する、スリリングな法廷劇。
- 思想も戦術も異なる被告たちが織りなす、対立と連帯のダイナミックな群像ドラマ。
- 1960年代のカウンターカルチャーの熱気と、現代にも通じる正義とは何かという普遍的な問い。
監督 | アーロン・ソーキン |
脚本 | アーロン・ソーキン |
出演 | エディ・レッドメイン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、サシャ・バロン・コーエン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・キートン |
配信 | 2020年 |
上映時間 | 130分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、脚本家アーロン・ソーキンの言葉の力が炸裂した、まさに聴く映画です。物語のほとんどは法廷という限定された空間で展開されますが、退屈さを感じる瞬間は一切ありません。
ソーキンが紡ぐ、ウィットに富み、理路整然としながらもエモーショナルなセリフの応酬は、まるで超一流の音楽のセッションを聴いているかのような知的興奮と快感をもたらします。本作の面白さは、単なる法廷での弁護側と検察側の対立に留まりません。
被告であるシカゴ・セブンもまた、実用的な政治改革を目指すトム・ヘイデンのようなリベラル派と、法廷を劇場化して体制を嘲笑うアビー・ホフマンのようなラディカル派とで、思想的に一枚岩ではないのです。
彼らの間で繰り広げられる対立と、絶望的な状況の中で生まれる奇妙な連帯が、物語に豊かな奥行きを与えています。
言葉がいかに人を動かし、歴史を創り、そして権力に抵抗する武器となりうるか。そのことを、これほどスリリングに証明した映画は他にないでしょう。

2人のローマ教皇
2012年、厳格な教義を重んじる教皇ベネディクト16世と、改革派として知られるベルゴリオ枢機卿(後の教皇フランシスコ)は、カトリック教会の未来を巡って対立していた。
しかし、ある歴史的な決断を前に、二人は対話を通して互いの過去と向き合い、友情を育んでいく。
- アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライス。名優二人が繰り広げる、至高の演技アンサンブル。
- 対立する二人が対話を通じて友情を育む、知性とユーモア、そして感動に満ちた脚本。
- 宗教的なテーマを扱いながらも、思想の違いを超えて互いを理解することの尊さを描く普遍的な物語。
監督 | フェルナンド・メイレレス |
脚本 | アンソニー・マクカーテン、フランク・コットレル=ボイス |
出演 | アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライス、シドニー・コール、リサンドロ・フィクス、マリア・ウセド |
配信 | 2019年 |
上映時間 | 125分 |
日本語吹き替え | あり |
本作は、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスという二人の名優が繰り広げる、対話の奇跡を描いた映画です。
物語の大部分は、思想的に対立する二人の老聖職者が、システィーナ礼拝堂の庭園や別荘でただ語り合うだけで進行します。しかし、その会話は退屈どころか、知的なユーモアと神学的な洞察、そして人間的な弱さの告白に満ちており、観る者を全く飽きさせません。
アンソニー・マクカーテンによる脚本の妙は、保守とリベラルという単純な二項対立に陥らず、それぞれの立場が持つ正当性と、彼らが個人として抱える罪の意識や葛藤を丁寧に描き出している点にあります。ピアノを弾き、炭酸飲料を飲み、サッカーを観戦する。そんな何気ない日常の描写が、彼らを教皇という記号から解き放ち、血の通った一人の人間として私たちの前に提示します。
思想の違いを乗り越え、対話を通じて互いを理解し、赦し合うことの尊さ。その普遍的なメッセージが、二人の名優の滋味あふれる演技を通して、静かに、しかし深く心に染み渡る一作です。

まとめ
マーティン・スコセッシ、アルフォンソ・キュアロン、ジェーン・カンピオン…。
かつては劇場でしか出会えなかったであろう巨匠たちの野心作が、今やあなたの指先一つで鑑賞できます。この10本の映画リストは、Netflixが現代の映画文化にとっていかに重要な存在であるかの証明に他なりません。
一本一本が、あなたの心に深い余韻と新たな問いを残すはずです。
今夜はどの物語に身を委ね、クリエイターたちの魂の叫びに耳を傾けますか?贅沢な映画体験が、あなたを待っています。
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